あなたは、日常生活や趣味の最中に、こんな「肩の痛み」を感じたことはありませんか?
- 洗濯物を干そうと腕を上げると、肩に「ズキッ」と痛みが走る
- 高いところにある物を取ろうとすると、肩が「ズキン」と詰まる感じがする
- スポーツ(野球、テニス、水泳など)で腕を振ったり上げたりする時に痛む
- 夜、寝返りを打つ時に肩がうずく、痛む
これらの痛みの原因として、非常によく見られるのが「肩のインピンジメント」と呼ばれる状態です。
「インピンジメント」とは、英語で「衝突」や「挟み込み」といった意味。つまり、肩の関節の中で、骨と骨の間に組織が挟み込まれてしまうことで起こる痛みなんです。
「年のせいかな…」と諦めている方もいらっしゃるかもしれませんが、インピンジメントは年齢に関わらず起こりうるものであり、適切なケアで改善が見込めることがほとんどです。
今日は、この「肩のインピンジメント」について、どのような症状が出るのか、なぜ起こるのか、そして新潟で改善を目指すためにどのようなアプローチが有効なのかを、私が長年の経験に基づいて分かりやすく解説します。あなたの肩の痛みの正体を知り、痛みのない快適な日常を取り戻す一歩を踏み出しましょう。
腕を上げるのが怖い…?「インピンジメント」の典型的な症状
肩のインピンジメントを疑うべき、代表的な症状はこちらです。
- 特定の角度で痛みが出る: 特に腕を真横や斜め上に上げていく際、だいたい60度〜120度くらいの角度で「ズキッ」とした痛みが強まることが多いです(これを「痛い弧(ペインフルアーク)」と呼びます)。それより低い角度や、真上まで上げきった状態では痛みが和らぐこともあります。
- 肩の奥の方や上側に感じる痛み: 痛みの場所は、肩の前面から側面、あるいは肩峰(けんぽう:肩の一番高いところにある骨の出っ張り)の下あたりに感じることが多いです。
- 夜間の痛み: 寝ている時に、特に痛い方の肩を下にして寝ると痛みが強くなることがあります。
- 肩の力が入らない、だるい: 痛みのために肩の筋肉がうまく使えなかったり、炎症によって筋力が低下したりすることがあります。
- 腕の可動域の制限: 痛みや詰まり感のために、腕をスムーズに動かせる範囲が狭くなります。
もし、腕を上げる際にこのような痛みや不快感を感じるなら、あなたの肩で「挟み込み」が起こっているサインかもしれません。
なぜ肩で「挟み込み」が起こるの?インピンジメントの構造と主な原因
私たちの肩関節は、非常に複雑で可動域が広い反面、非常に不安定な構造をしています。
肩の骨の「屋根」のような部分を「肩峰(けんぽう)」といい、その下には腕の骨の「ボール」の部分(上腕骨頭)があります。そして、この狭い「屋根」と「ボール」の間に、腕を動かすために重要な筋肉の腱(特に**腱板筋群(けんばんきんぐん)と呼ばれる、肩を安定させる4つの筋肉の腱)や、クッション材である滑液包(かつえきほう)**といった組織が通っています。
この「屋根」と「ボール」の間のスペースが狭くなったり、腕の上げ方が悪かったりすると、通過している腱や滑液包が挟み込まれてしまい、炎症を起こしたり傷ついたりします。これがインピンジメントの正体です。
では、なぜこのスペースが狭くなったり、挟み込みが起こりやすくなったりするのでしょうか?主な原因は以下の通りです。
- 姿勢の悪さ: 猫背や巻き肩の姿勢は、肩甲骨や鎖骨の位置をずらし、肩峰の下のスペースを狭めてしまいます。これはデスクワークやスマホの使いすぎで現代人に非常に多い原因です。
- 肩甲骨の動きの悪さ: 腕を上げる際に、肩甲骨が適切に回旋してくれないと、肩峰が邪魔になりやすくなります。肩甲骨周りの筋肉のバランスが崩れていると起こります。
- 腱板筋群の弱化や機能不全: 肩のインナーマッスルである腱板筋群が弱かったり、うまく働かなかったりすると、腕の骨(上腕骨頭)が引き上げられてしまい、「屋根」に近づきすぎて挟み込みやすくなります。
- 肩周りの筋肉の柔軟性不足や過緊張: 胸の筋肉(大胸筋・小胸筋)や背中の筋肉(広背筋)などが硬いと、肩関節の正常な動きが阻害され、無理な動きで挟み込みを起こしやすくなります。
- 繰り返しの動作や使いすぎ: スポーツや仕事で腕を上げる動作を繰り返し行うことで、腱や滑液包が炎症を起こし、腫れてスペースがさらに狭くなる悪循環に陥ります。
このように、インピンジメントは「骨の変形」だけでなく、「筋肉の機能不全」や「体の使い方・姿勢」が大きく影響していることが分かります。
放っておくとどうなる?インピンジメントを無視するリスク
「痛いけど、まぁ大丈夫だろう」と放置していると、症状は悪化し、さらに厄介な状態になる可能性があります。
- 慢性の腱炎・滑液包炎: 炎症が長引き、痛みが慢性化します。
- 腱板断裂のリスク増加: 挟み込みが繰り返されることで、腱がすり減り、最終的には断裂してしまう可能性があります。腱板断裂となると、手術が必要になるケースも出てきます。
- 二次性凍結肩(四十肩・五十肩): 痛みがあるために肩を動かさなくなることで、肩関節全体が固まってしまい、「動かせない、痛い」といういわゆる凍結肩(フローズンショルダー)に進行してしまうことがあります。
- 日常生活や趣味の継続が困難に: 痛みのためにやりたいことができなくなり、生活の質が著しく低下します。
痛みを早期に認識し、適切なケアを始めることが、これらのリスクを防ぐために非常に重要です。
インピンジメントを改善・予防するためにできること
では、肩の挟み込みを解消し、痛みのないスムーズな動きを取り戻すためには、どのようなアプローチがあるのでしょうか。
- ご自身でできること:
- 痛む動作を避ける: まずは、痛みを誘発する動作や姿勢を避けるように心がけましょう。
- 安静と冷却: 炎症が強い時期は、無理に動かさず安静にし、患部を冷やすことが有効です。
- 軽いストレッチ: 痛みが出ない範囲で、胸や背中の軽いストレッチを行い、肩周りの柔軟性を保つようにします。(※痛む場合は無理に行わないこと)
- 専門的なアプローチの重要性: インピンジメントの原因は複合的であり、自己流のケアでは限界があることがほとんどです。特に、硬くなった深層部の筋肉、関節の微妙なズレ、そして間違った体の使い方を根本から改善するには、専門家による評価とアプローチが不可欠です。
プロはココを見る!インピンジメント改善でアプローチすべき「鍵となる筋肉」
私が施術やトレーニング指導でインピンジメントのお客様と向き合う際、特に重要視し、アプローチする「鍵となる筋肉」があります。
- 腱板筋群(特に棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋): 肩関節の安定性を高め、腕を上げる際に腕の骨(上腕骨頭)が上にずれ上がらないように抑える役割があります。これらの筋肉が弱かったり、逆に緊張しすぎていたりすると、挟み込みの原因になります。ストレッチで緩めたり、適切なトレーニングで強化したりします。
- 肩甲骨周りの安定筋(僧帽筋下部・中部、菱形筋、前鋸筋など): 肩甲骨が正しい位置で安定し、腕の動きに合わせてスムーズに回旋することは、肩峰下のスペースを確保するために極めて重要です。これらの筋肉が弱かったり、協調して働かなかったりすると、肩甲骨がうまく動かず、挟み込みを起こしやすくなります。トレーニングで機能を高めるアプローチが必要です。
- 姿勢に関わる筋肉(大胸筋、小胸筋、広背筋、斜角筋など): これらの筋肉が硬く縮こまっていると、猫背や巻き肩といったインピンジメントを助長する悪い姿勢を作り出してしまいます。整体による手技でこれらの筋肉を緩め、良い姿勢を取りやすくすることが重要です。
これらの筋肉の状態を一つ一つ丁寧に評価し、硬くなっている部分は緩め、弱くなっている部分は強化し、そしてそれらの筋肉が連携して働くための正しい体の使い方を指導すること。これが、インピンジメントの根本改善には不可欠なのです。
カラダ使い・カラダ作り・姿勢の達人の店ボディケアグリーンズ 森田