「力を抜いてください」は魔法の言葉ではない? 専門家が語る、本当の意味でのリラックスとは

整体やマッサージに行った際、施術者から「ずいぶん力が入っていますね。力を抜いてくださいね」と言われた経験のある方は多いのではないでしょうか。しかし、実際この言葉だけで、すぐに体の力を抜ける方はごくわずかです。まるで「眠ってください」と言われてすぐに寝付けないのと同じように、意識的に力を抜こうとすればするほど、かえって力んでしまうこともあります。

なぜ「力を抜く」ことはそんなに難しいのでしょうか?

それは、体の緊張の多くが、無意識レベルで起こっているからです。長年の姿勢の癖、ストレス、過去の怪我、体の使い方など、様々な要因が複雑に絡み合い、特定の筋肉に過剰な負担がかかり、慢性的な緊張を生み出しています。施術者に「力を抜いて」と言われたところで、その根本的な原因が解消されていない限り、表面的なアドバイスだけではどうにもならないのです。

真の改善には、緊張の原因を「紐解く」技術が必要

本当に体の状態を改善するためには、施術者がお客様の体の状態を丁寧に評価し、緊張の根本的な原因を探り当てる必要があります。それは一つだけでなく、複数の原因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。

この原因を特定し、それぞれの問題に対して適切なアプローチを行うには、施術者の高度な技術、触診による鋭い感覚、解剖学や生理学に基づいた正確な知識、そして豊富な臨床経験が不可欠です。まさに、施術者の総合的な実力が試されると言えるでしょう。

「力を入れる」ことと「力を抜く」ことの深い関係

興味深いことに、本当に「力を抜く」ためには、まずしっかりと「力を入れる」ことができる必要があります。筋力トレーニングを中級以上経験された方であれば、意識的に筋肉を全力で収縮させる感覚をご存知でしょう。そして、その後に訪れる、筋肉が自然と緩んでいく感覚も理解しているはずです。

これは、筋肉が最大限に収縮した反動で、より深くリラックスするという自然な生理現象です。つまり、「力を抜こう」と意識的に頑張るのではなく、まずは自分の体をしっかりとコントロールし、意図的に筋肉を収縮させる感覚を養うことが、結果的に深いリラックスへと繋がるのです。

「頑張るリラックス」からの脱却

「力を抜く」ことに一生懸命になるのは、眠ろうと必死になるのと同じで、逆効果になることがあります。まずは、ご自身の体を意識的に動かし、筋肉をしっかりと使う感覚を取り戻すことから始めてみましょう。

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