左右で違うお尻の形の謎(骨盤矯正よりも大事)

はじめに

マッサージや整体の施術者の方々にとって、「左のお尻はパーンと張っているのに、右のお尻の下の方が少し凹んでいる」という状態は、非常によく見られる光景です。実際、7割から8割もの方が、程度の差こそあれ、この左右非対称な状態に当てはまると言われています。これは一体なぜなのでしょうか?

原因は、私たちの日常的な体の使い方にあり!

この左右差の大きな理由として考えられるのは、私たちが普段立ったり座ったりする時の体重のかけ方のクセです。

左のお尻がパーンと張る理由

多くの場合、立っている時や座っている時に、無意識のうちに左のお尻の横にある**大転子(だいてんし)**という骨に体重をかけている傾向があります。大転子とは、太ももの骨(大腿骨)の付け根の横側にボコッと出ている部分です。

お尻の筋肉、特にお尻の横側にある**中殿筋(ちゅうでんきん)や、お尻全体を覆う大殿筋(だいでんきん)**の一部は、この大転子に腱を介して付着しています。

イメージしてみてください。常に左の大転子に体重がかかっていると、これらの筋肉は、骨に引っ張られるような状態になります。これは、まるでゴムバンドの一端を固定して、もう一端を常に引っ張っているような状態です。その結果、左のお尻の筋肉は慢性的に緊張しやすく、硬く張ってしまうのです。

右のお尻の下が凹んでしまう理由

一方、右側では、体重が鼠径部(そけいぶ)(太ももの付け根の前側)、あるいは太ももの前側(大腿四頭筋)、膝、脛といった体の前側に偏ってかかる傾向があります。

特に鼠径部に体重がかかることが多いと、股関節の位置がわずかに前方に移動する、専門的には股関節の軽度前方変位と呼ばれる状態になりやすくなります。

お尻の下の方にある筋肉、主にハムストリングスという太ももの裏側の筋肉の上部(特に大腿二頭筋長頭という部分)は、坐骨という骨盤の下の部分から始まって太ももの骨につながっています。

股関節が前方に変位すると、このハムストリングスの上部は、起始部である坐骨の位置関係が変わり、本来力を発揮しやすい位置からわずかにずれてしまいます。筋肉は、適切な位置でなければ十分に力を発揮できず、使われにくい状態になります。

使われなくなった筋肉は徐々に弱くなり、ボリュームを失っていきます。その結果、右のお尻の下の部分が、筋肉の萎縮によって凹んで見えるようになるのです。

日常生活のクセが積み重なって起こる

このように、日常生活でのほんのわずかな体重のかけ方のクセが、長年積み重なることで、左右のお尻の筋肉の状態に明確な違いを生み出してしまうのです。例えば、

  • 立っている時にいつも左足に重心をかけている
  • 座っている時にいつも左側に体重をかけている
  • 利き足が左足である
  • いつも同じ側の肩に鞄をかけている

といった習慣も、この左右差を助長する要因となります。

まとめ

「左のお尻が張って右のお尻の下が凹んでいる」という多くの人が抱える体の左右差は、無意識の体重のかけ方の偏りが、お尻周りの筋肉や股関節に影響を与えることで起こります。左側は体重がかかることで筋肉が引っ張られて張りやすく、右側は体重のかけ方の偏りによって股関節の位置が変わり、お尻の筋肉が弱化して凹んでしまうのです。

このメカニズムを知ることで、ご自身の体の状態をより深く理解し、日頃の姿勢や体の使い方を見直すきっかけになるかもしれません。マッサージや整体などの施術を受ける際にも、この左右差について施術者と共有することで、より効果的なケアにつながるでしょう。

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