皆さん、こんにちは。新潟市で22年間、ボディケアグリーンズという整体サロン&パーソナルトレーニングジムを経営している整体師の森田です。
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「猫背を治したい」「背筋を伸ばしたい」—そう願って胸を張ろうとしても、気づけばまた体が丸まってしまう。特に高齢になるにつれて、背中が丸まり、体が小さく縮んでいくのを感じる方は多いのではないでしょうか。
この円背姿勢(猫背)は、単に背中が丸まっている(屈曲している)という見た目の問題だけではありません。私の臨床経験が示すのは、円背の根本的な問題が、「体幹の安定性(コアスタビリティ)が働かないために、体全体が下に沈んでしまう(短縮してしまう)」という現象とセットになっている点にあります。
今日は、なぜ猫背になると体が縮んでしまうのか、そして姿勢を根本から改善し、体を「垂直方向」に引き上げるための具体的な戦略について、深く掘り下げてお話ししたいと思います。
1. 猫背の裏側:コアスタビリティの喪失と「短縮」の連鎖
円背姿勢は、多くの場合、胸郭と骨盤が近づいてしまい、全体的に体躯が下に下がっている状態(短縮)を伴います。
🚨 「沈んだ体」が引き起こす問題
体幹の安定を保つためのインナーマッスル(腹横筋や多裂筋など)がうまく働いていないと、重力に対して体を支えきれず、体幹が崩壊します。
- コアスタビリティの低下: コアスタビリティが非常に強く働いているにもかかわらず、著しく丸まってしまっているというケースはほとんどありません。つまり、猫背の真犯人は、体幹を内側から支える力が不足していることにあります。
- 骨盤の後傾: 円背姿勢は骨盤の後傾を伴うことが多く、横から見ると重心が後方にかかりやすくなります。この後方重心は、高齢者の場合、尻もちをついたり、圧迫骨折につながるリスクを高めます。
姿勢を改善し、起こすということは、単に背中を反らせるのではなく、体幹を「上に引き上げること(上方に延伸させること)」を意識する必要があります。極論すれば、上に引き上げることができれば、多少の円背が残っていても、人間の体は機能的に動くことができるのです。
2. 改善のための戦略:体を「垂直」に延伸させる
姿勢を改善し、コアスタビリティを回復させるためのアプローチは、以下の3つの体位から、体を「引き上げる力」を再教育することにあります。
① 側臥位でのアプローチ:体幹の短縮を解放する
側臥位(横向きに寝る姿勢)は、重力の影響を軽減し、お客様自身が自分の姿勢の可動域を把握しやすいメリットがあります。
- 目的: 円背に伴い短縮している主な原因筋である腰方形筋などの筋肉を緩めること、および短縮している前方の腹筋群を伸ばすことを目的とします。
- テクニック: 骨盤の後傾を改善するために、骨盤をアップライト(立った状態に近い位置)に固定します。そこから、体幹を大きく動かし、硬くなっている筋肉が緩むように、ストレッチの最終域から軽く力を入れてもらうテクニック(コントラクトリラックス)などを活用します。これにより、狙った筋肉が緩み、体幹の短縮が解放されます。
② 呼吸を使ったアプローチ:コアの活性化と伸展の促通
呼吸は、円背の改善においてコアスタビリティの活用と脊柱の伸展を促すために最も重要です。
- メカニズム: 大きく息を吸う動作は、横隔膜を働かせ、腹腔内圧を高めます。これは、コアスタビリティを働かせるという考え方に直結します。コアを働かせながら、同時にセラピストが背中(胸腰移行部あたり)を後ろから優しくアシストすることで、脊柱の伸展(反る動き)を促すことができます。
③ 立位でのアプローチ:最も実用的な体の使い方
患者さんが日常生活で最も困るのは歩行や立位の時であるため、立位でのアプローチは不可欠です。円背は重心が後方にかかりやすい状態(後方重心)であるため、安全性が重要となります。
- 安全確保と重心の前方移動: ベッドや壁、手すりなどのサポートを体の前方に置き、前傾姿勢を取ってもらいます。その上で、手で前方のサポートを支点にし、手の力で体をぐっと起こすように促します。これにより、体は起きている状態になり、同時に重心は前に維持されるため、後方への転倒リスクを避けながら、体幹の伸展を促すことができます。
- 上肢のレバー活用: 「体を起こしてね」と指示するよりも、「手を上げましょう」と指示した方が、上肢という長いレバーを使って体幹を効率よく起こしやすくなります。この連鎖的な動作を利用することで、胸椎から腰部までの伸展筋群を連鎖的に働かせます。
3. 最後に:「老い」に負けない垂直の美学
円背の改善は、単に見た目の問題ではありません。それは、体の機能を回復させ、転倒や圧迫骨折といった将来のリスクを回避するための、極めて重要な「垂直方向への戦略」です。
高齢になっても、体が持つ「上方に延伸する力」を回復させることができれば、人間の体は機能的に動くことができます。老いに逆らうのではなく、その上でいかに「体幹を長く保ち、機能的に動かすか」という垂直の美学を追求することが、私たちの目標です。
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整体師 森田 ボディケアグリーンズ 代表